【全館空調の選び方】全館空調の種類と特徴について
全館空調って各社で同じ?
近年、全館空調のCMや広告が増えており昔と比べて住宅選びをする際に「全館空調」を検討する人が多くなっています。「床暖房⇒床を暖める」というイメージと同様に、「全館空調⇒お家全体を冷暖房する」というイメージがあると思いますが、実は同じ全館空調でも考え方やシステム、メリットやデメリットが大きく異なります。
検索してもこの辺りを詳しく解説しているサイトは見つけられませんでした・・・
そこで今回は、全館空調システムの種類や特徴、選ぶべき全館空調について詳しく解説していきます。
【目次】
1.全館空調の種類
全館空調システムは主に4種類あります。
これまで全館空調システムは細かく分類されていませんでしたが、今回調査した結果上記4種類に分けられることが判明しました。
簡単に言えば、
輻射式 ⇒ 床暖のような感じで全体を冷暖房する
対流式 ⇒ エアコンのような感じで全体を冷暖房する
分離式 ⇒ 夏はエアコン、冬は床暖のような感じで全体を冷暖房する
複合式 ⇒ 床暖とエアコンのような感じで全体を冷暖房する
上記のイメージでほとんど間違いありません。
一番多いのは「対流式」で、次に多いのは「複合式」となっており「輻射式」や「分離式」はあまり見かけることはありません。
それぞれの特徴など詳しく解説していきます。
2.輻射式(ラジエントタイプ)
輻射式の全館空調の仕組みは下記のようなイメージです。
床などを温めたり冷やしたりすることにより空気の温度を変化させます。
◆特徴
・暖かい空気や冷たい空気を送り込むことを前提としていないため、床下や壁、天井などに空気口がありません。
・使用する設備は床暖房やパネルヒーターがほとんどです。
◆メリット
・直接床なども温かくなる(冷える)ため伝導熱による暖かさ(涼しさ)も感じられる。
◆デメリット
・全ての床や壁に床暖房等の設備を設置するため建築コストが高くなりやすい。
・光熱費、維持費が高くなりやすい。
・結露が起こりやすい。(夏場)
◆コメント
簡単に言えば床暖房のイメージですが、住宅全体を床暖房(冷房)にするため建築コストが高くなりやすいことに加え、冷房時には結露が起こりやすくデシカント空調などを導入しなくてはいけません。そのため、維持メンテナンス費用や光熱費が高くなりやすいことから導入している企業はとても少ないのが現状です。
3.対流式(コンベクションタイプ)
対流式の全館空調の仕組みは下記のようなイメージです。
暖かい(冷たい)空気を送り込むことで全体の空気の温度を変化させます。
◆特徴
・床、壁、天井のいずれかに空気口が必ず設置されている。
・設備は主にエアコン、もしくは専用の空調機器。
・屋根裏、天井裏、床下のいずれかの場所に設備があることが多い。
・送風方法は「強制送風」「一部強制送風」「自然送風」の3パターンが主流。
イメージとして、ダクトなどの風道が各スペースまで通っているのが「強制送風」、一部通っているのが「一部強制送風」、天井裏や床下などから自然に空気が送り込まれるのが「自然送風」になります。
◆メリット
・汎用設備でも実現可能なため比較的コストを抑えやすい。
・どのシステムでも比較的快適に過ごしやすい。
◆デメリット
・システムによって、複数の設備や補助設備が必要(推奨)となる場合がある。
・システムによって、乾燥・結露を起こす場合がある。
・専用機器を使用する場合、維持メンテナンス費が高額となる場合がある。
◆コメント
一番主流な方式で特別問題となるような点が少ない一方で、システムによって大きな差があります。専用機器を使用する場合は導入・維持メンテナンス費が掛かり、強い風で冷暖房するシステムの場合は乾燥や結露を起こします。また、補助設備や複数の設備設置が前提となっているシステムもあるため選ぶ際には注意が必要です。
4.分離式(セパレートタイプ)
分離式の全館空調の仕組みは下記のようなイメージです。
夏と冬で冷暖房の方式が変わります。(上記は一例です)
◆特徴
・冷房と暖房で使う設備が異なる。
◆メリット
・特になし。
◆デメリット
・導入コストが高くなる。
・維持メンテナンス費が高くなる。
◆コメント
メリットらしいメリットもなく、導入企業もほとんどないため基本的に見かけることはほとんどありません。
5.複合式(ミックスタイプ)
複合式の全館空調の仕組みは下記のようなイメージです。
上記はエアコンなどの空調設備から輻射熱も利用した場合のイメージです。反対に、床暖房(冷房)などで温められた空気を各スペースに送り込む方法も考えられます。
◆特徴
・床、壁、天井のいずれかに空気口が必ず設置されている。
・対流式に似ており、見た目ではわかりにくい。
◆メリット
・輻射式の伝導熱、対流式の汎用設備の利用など双方のメリットを受けられる。
・消費エネルギーが少なく、光熱費を抑えることが可能。
・ダクト(風道)も含めて温度差が少ないため結露が起こりにくい。
・熱風や冷風、強い風を必要としないため極端な乾燥を防ぐ。
・汎用設備が利用できるため、維持メンテナンス費を抑えることが可能。
◆デメリット
・複雑な計算が必要なため、建築可能な企業が少なく導入コストが高くなりやすい。
・消費エネルギーの高いシステムも存在する。
◆コメント
一見すると対流式の一般的なシステムと大きく変わらないように見えますが、「暖かい(冷たい)空気を送ること」を主としておらず、暖かい(冷たい)空気を送りつつ床なども温める(冷やす)ことが複合式の考え方です。そのため、効率よく稼働させるためには複雑な計算が必要となり建築可能な企業は少ないですが、他の全館空調に比べて大きな効果をもたらします。
6.おすすめのタイプ
型式 :複合式(ミックスタイプ)
設備 :汎用設備(汎用エアコンなど)
設備の台数:1台
上記3点を抑えた全館空調が理想的です。
理由①「結露や極端な乾燥を防ぎやすい」
複合式は、輻射熱と対流熱で冷暖房する考え方のため、強い熱風や冷風を生じさせないシステムが多く、気流による極端な乾燥を防ぐと共にそ温度ムラが最小限で済むため結露が生じにくくなります。
理由②「汎用設備1台でも導入可能」
複合式の考え方から、汎用設備1台でも十分な効果を発揮するシステムがほとんどです。設備コストはもちろん光熱費や維持メンテナンス費を抑えることができるため全館空調を採用するメリットを最大限受けることが可能です。
理由③「快適性」
床冷暖房のように足元から快適で、温度のムラがほとんどなく、強い風がないのでエアコンが苦手な人でも快適に過ごすことが可能です。
このように、同じ全館空調でもシステムや考え方によってメリットやデメリットは様々です。全館空調に関する情報はまだまだ少なく難しいかもしれませんが、それでも自分たちに合ったシステムを選択することがとても重要になります。
ちなみに当社の全館空調は複合式になりますが、さらに効果を高めるための独自の対策を講じています。全館空調のことでお悩みの方は是非お問い合わせください。
お問い合わせ
▼▼▼▼▼